植木投げの法
東方のssをやってます。霖之助中心です。リンクフリーでございます。
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卯酉行路
 絵チャ凄い楽しかった。
 私の心臓は幻想入り致しましたが…。
 リンクも増えて、凄い嬉しい。泣くほど。
 本当は道草さんにもリンクの申し込みしたかったなぁ。

 今回は初のメリ霖です。
 ちゃんと書けてるかなこれ。


 卯キョウトと酉トウキョウを繋ぐ卯酉東海道線。
 地下をめぐるにも関わらずその車内は明るく、外の風景のようなもの(・・・・・)さえ見ることができる。
 私は暗澹たる気持ちで荷物を抱え、ヒロシゲ36号に乗るのだった。

『卯酉行路』

 トウキョウとキョウトを繋ぐヒロシゲ36号。
 発車して間もない自由席は人がちらほらいるだけに留まっている。
 窓の外に見えるのは、美しい偽物の霊峰富士。
 室内の光を少し反射して曇った窓に、私の顔を映している。
 向かいにいるはずだった私の友人は、一足先にトウキョウへと向かっていた。
 自身がレポートの提出期限を間違えたばかりの悲劇なのだが、誰が悪いかと言われればもちろん私が悪い。
 重々承知している。
 けれど、どうもやるせない。
 肺の中身を絞り出すために一つため息を吐いた。
 一瞬、窓の一部が曇る。
 わざわざ拭く気にもなれなかったので、曇りがはれるのを待つ。
 やがて正常に私の顔を映すに至ると同時に、あるものを映しだした。
 銀髪で異国風の服を着た青年が座っている。
 自分の斜め向かいに、本を読みながら。
 いつからいたのだろうか。
 少なくとも発車直後にはいなかったはずだ。
 この人は気が付いていないのだろうか。
 …とりあえず、声をかけてみよう。

「あの…」

 そこでようやく、彼は本から目を外した。
 あたりをキョロキョロと見回している。
 どうやら彼は自分で来たわけではないらしい。
 まるで夢の中の私のようだ。

「まぁ、そんなに焦らなくても。まだ到着まであと45分はありますわ」

 妖怪が出るような危険も無い。
 ヒロシゲの中では遭難しようもない。
 それに、夢ならそのうち覚めるだろうし。

「ゆっくりお酒でも飲んだらどう?」

 お酒が入ったコップを差し出したところで、ようやく彼は、その言葉が自分に向けられていたものだと分かったらしい。
 一瞬怪訝そうな顔をしたが、何かを諦めたようにため息を吐いてコップを受け取った。
 もしかしたら、以前にも似たような経験があるのだろうか。
 少しの間、沈黙する。
 酒を勧めてみたものの、大したプランがあった訳ではない。
 饒舌になってくれるといいのだけれど。

「あの山は富士山と言うのだろうけど…」

 いきなり話しかけられて驚いた。
 だけど、それをなんとか隠して耳を傾ける。

「想像していたよりも随分と薄いな」

 妙な事を言う。
 デザインド・バイ・ヒロシゲの。
 誇張とすら言えるほど雄大に描かれたこの映像の富士を、薄いと。
 …まぁ、意味は分からないでもないのだけど。

「物理的に、って意味なら勘弁してほしいわ。あれは映像だもの」

 幅的な意味じゃ、スクリーンの厚みと本物の富士の厚みで比べたところでジョークになるだけだ。
 彼も得心したようだ。
 「ああ、なるほど…」と呟いて、何かを考え始めた。

「なにか思う所でも?」
「…あの山の写真を見た事があるんだけど、あそこまで豪華だったかと思ってね」

 確かに、若干の誇張がされている気もする。
 だけどされていたところで。

「いいじゃない、綺麗だし」

 つまるところそんなものだ。
 本物より綺麗だから駄目、などと言うそんな考えは、もう無い。
 人間が感じ入る事が出来るのは結局のところ、ヴァーチャルなのだから。

「いつだってそうよ。私たちは山より山の絵に、海より海の絵に感動してきた」
「本物にも感動しただろう」
「それはそうよ。そうでなったら絵なんて文化はないわ」

 本物を愛する気持ちが無ければ、偽物なんか作れない。

「本物を愛する気持ちに感動するのよ」
「人の美化にかい?」
「恋愛小説はお好きでしょう?」
「いや、生憎」

 恋に恋する。
 恥ずかしいセリフだけど、そんなものだろう。
 …そこで、ふと気が付いた

「…そろそろお別れみたいね」
「うん?」

 彼を取り巻くように境界が歪んできている。
 帰る時間が近付いてきてるのだろう。
 そういえば、ヒロシゲと巡る53分の旅も終りに近づいてきている。
 スタッフロールがスクリーンに流れ始めていた。

「楽しかったわ」
「そうかい。僕は最後まで状況が分かってないけどね」
「分からない方が良い事もある」
「この場で使うフレーズではないね」

 「Designed by Utagawa Hiroshige」の文字が移る。
 直後、暗転。
 何も見えなくなってしまった。

「それじゃあ」
「ああ。縁が合ったら、また会おう」

 半ばジョークのような響きを感じながら、別れの言葉を交わす。
 暗転が終わり、人工の光が戻った後には何もいなかった。
 まるで最初から何もいなかったとでも言うように。

 彼が座っていた席に残る、本を除いて。


テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
メリ霖は新たな可能性があると思います。

言ってくださればリンクしますのに、と思い貼ろうかと思ったけどリンクフリーか書いてなかったのでそのうちに……。
いや、理由があったのなら仕方ないですが
2010/02/10 (水) 19:05:23 | URL | 道草 #mQop/nM.[ 編集]
Re: タイトルなし
メリ霖はウェアラブルな可能性の宝庫です。

いえ、上手い事切り出せなかった私のミスですので、すいません。
リンクフリーも書き足しておきました。
こちらから一足先にリンクさせてもらいますね。
2010/02/12 (金) 17:49:14 | URL | 生植木 #-[ 編集]
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