植木投げの法
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あるはなし・不返の命

 筆がのってきたと思ったらオチが思いつかずにやたらとグダグダに。
 もう駄目ですよ私は。

 さて、今回はリクエストの幽々子のヤンデレ(?)でございます。
 ヤンデレの意味を少々履き違えている気もしますが、なにぶん眠かったんです。
 また後日修正するかもしれません。


『あるはなし・不返の命』





 まず最初に知覚したのは、朦朧とした自分の意識だった。
 周りを見た感じでは、少なくとも僕が知る場所ではなかった。
 物置なのか、板張りの床や掃除のされていない箱がひしめいていた。
 しばらく呆けていたら、だんだんと意識がはっきりしてきた。
 僕はどうやら監禁されているらしい。
 あまりに突拍子の無い事だけどしかたない。
 僕が一番呆れている。
 何とかしようと思ったのだが案の定、僕は後ろ手に縛られ、足も纏めてある。
 こんな芋虫のような状態で逃げても無意味だろう。
 それどころか、僕をさらったなにがしさんを刺激してしまうかもしれない。
 僕は諦めて壁に寄りかかった。
 しばらくそうしていると、どこかの扉が開いた音がした。
 残念ながら僕はそれを視認できる位置にはいなかったので確信はできなかったが。
 しかし足音が無く、僕の方に近づいてきている気配も無かった。

「いい格好ね、霖之助。素敵よ」

 だが、彼女にそんな常識は通用しなかった。
 足音なんかするわけが無い。
 なにせ浮いているんだから。
 そのまま足音を立てることも無く、彼女は僕の前に顔を持ってきた。

「…幽々子さん。僕はこれでも、あなたのセンスを評価していたんですけどね」 

 僕の反応が気に入ったのか、彼女は口元を隠してクスクスと笑っている。
 なかなか艶やかな仕草だった。
 こんな場所で見なければと僕は後悔せざるをえなかった。
 そんな僕に気がついているのかいないのか、未だ彼女はクスクスと笑っている。

「本当に素敵なのに」
「どこがですか」
「後ろ手に縛られているのなんか特に」

 なかなかサディスティックな御仁だった。
 僕にはまったく理解できないのだけど。
 そのうち幽々子さんは笑うのを止め、僕の肩に手を置いた。
 そしてまっすぐに僕を見つめてくる。
 少し照れてしまった。

「でも、妙に落ち着いてるのね」

 心外だった。
 僕はこれでも混乱しているというのに。
 まぁ、そんなことくらい彼女にはお見通しだろう。
 からかわれるのはいつになっても慣れないものだ。

「まぁ、そんなことよりも。何で僕はこんな所にいるんですか?」
「連れてきたからに決まってるじゃない」
「なんでですか」

 また幽々子さんは口元を隠して笑い始めた。
 しかし今回の笑みには若干違和感を覚えた。

「本当に分からないの?」
「ええ」

 どうやら幽々子さんは可笑しくてしかたないらしい。
 何か不良品でも売りつけてしまったかと考えを巡らしている内に、あることに気がついた。
 幽々子さんの笑みが怖かったことに。
 あまりにも自然で分からなかった。
 一度気がついてしまえばもう抑えられない。
 僕は後ろにさがろうとしたが、壁際に居たことを思い知らされた。

「鈍感ねぇ。紫も妖夢も苦労したでしょうに」
「なんの話ですか」
「こっちの話よ」

 ツイ、と彼女は僕に顔を寄せてきた。
 額は触れ、唇がもう少しで重なる距離。
 僕は顔を背けようとしたが、幽々子さんに頭を掴まれてしまい、それは叶わなかった。
 直視した彼女の目は真剣で、ほんの少しだけ不純な物が混じっていた。

「ねぇ霖之助」
「なんでしょう」
「一度死んで見ない?」

 驚きのお誘いだった。
 今までそんな事を言われたこともなかった。

「…また行き成りな」
「別にいきなりって事はないわ。私なりにいろいろ考えてみた結果なの」

 そこに行き着く過程がまったく分からない僕は異常なのだろうか。
 少なくとも、この狭い空間内では異常なのだろう。
 でも僕はそれに従うわけには行かない。
 未だ満足するほど、僕は生きていない。

「どんな考えですかそれ」
「死はね、生きたことの結果じゃないの」

 突然彼女は語りだした。
 目は僕から逸れ、濁っていく。
 そんな幽々子さんの目は見たくなかった。

「死はね、生まれた瞬間から自分で育んでいく物なの。まるで植物を育てるみたいに毎日水をあげて、いい肥料を使って、鉢の手入れをするの。そしてその最後の瞬間、死は綺麗に花開くの。生きていた内の何よりも美しく」

 徐々にその気配は恍惚を帯び始めた。
 僕はますます混乱した。
 幽々子さんは僕の頭を掴む力を強めた。
 痛みに少し声を上げてしまったが、彼女は止まる気配はない。

「私はね、何度もそう言うのを見てきたの。その度にその美しさに見惚れるの。また見たいって思ってしまうの。でもね、その美しさも思い出せば思い出すほど、薄汚くなってしまうの。だから」

 また幽々子さんは、僕の瞳を覗き込んだ。
 彼女の瞳は完全に濁り、元の美しさなんかもうどこかに消えてしまっていた。
 少しだけ頭を締め付ける力が緩んだ。
 だが僕の視線は固定されたままだ。
 たっぷり一分ほど置いてから幽々子さんは僕に言った。

「あなたの死を見せてちょうだい」

 その瞬間、僕の心臓の鼓動が大きくなった。
 明らかな体の不調に僕は驚いたが、幽々子さんはあわてる様子を見せない。
 脂汗が僕の額を流れ、落ちた。

「大丈夫、怖いことなんか何も無いわ」

 そう呟いて、幽々子さんは僕を抱きしめた。
 柔らかな感触と甘い臭いが僕を覆った。
 あんなに速かった鼓動が今はひどくゆっくりと聞こえる。
 意識が薄れ、目の前のものも見えない。

「私がちゃんと見ていてあげるから」

 とうとう僕の鼓動が聞こえなくなった。
 痛みも無く、自分でも驚くほど簡単に、僕は僕を手放した。










 済んでみれば、あとは空しいだけだった。
 私の腕の中には動かなくなった霖之助がいる。
 いま間近に触れた死は、間違いなくこの世の何よりも美しかった。
 でも、それだけだった。
 美しいだけで、それは私に語りかけてはくれない。
 もう冗談で手を握っても、なにも言ってくれない。
 冷たく硬い感触だけが私の手の平を伝ってくるだけだった。
 私はそこに至ってやっと、自分がどれほど愚かしいことをしたのかに気がついた。

「…ごめんなさい」

 私はいっそう強く霖之助を抱きしめた。
 でも彼が苦しいと言う事も無い。
 ただ服の肩口が私の涙で濡れるだけだった。

「…ごめんなさい」

 私が好きだったのは、霖之助だ。
 霖之助の死を愛していたわけでは決して無い。
 後悔だけが深く私を苛んだ。
 嗚咽交じりに謝り続けた。
 もう霖之助には届かないだろうけど、でも私は謝り続けた。



 私はまた、死んでしまった。




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